数寄和 |
2008/5/5(月) – 5/19(月) |
数寄和大津 |
2008/5/29(木) – 6/15(日) |
数寄和 吉田加南子先生 在廊予定 5/5 15:00 –
数寄和大津 吉田加南子先生 在廊予定 5/31
参考作品(大津展のみ)
日下部鳴鶴 比田井天来 上田桑鳩 金子鴎亭 手島右卿 比田井南谷
出品作家
飯高和子 石飛博光 内山玲子 大井錦亭 太田義久
華雪 亀井武彦 鬼頭墨峻 鈴木まつ子 竹内幸
辻井京雲 辻元大雲 中野北溟 船本芳雲 吉田加南子
後援 財団法人 毎日書道会
協力 天来書院
「ふらんすに行きたしと思えど、ふらんすはあまりに遠し」かつて日本の詩人である萩原朔太郎が詠ったように、フランスに憧れる日本人はたいへん多いと思い ます。かつてフランスの詩を堀口大学の訳詩で読み、フランス料理やフランス菓子、シャンソンそしてファッション、芸術とフランスへの関心は今日の中高年か ら壮年の方々を中心に今も憧れが強くあると思います。
ではどうして日本人はフランスに憧れるのでしょうか?
英語が話せると何処でも通じるといわれながらも、フランスの方々は旅行者を母国語で迎えると聞きます。自分達の言葉へのこだわり、美しいものへのこだわ り、それらが伝統や文化を大切にしながら新しい文化を生み出す力となると思います。今日、新しいシャンソンがフランスの町を流れていることでしょう。
文字の発明により、それぞれの民族の歴史が残ってきました。字を石に刻む。美しい線を書く。それから発展して、遊びこころがいっぱい広がり、豊かな文化となって姿・形を変えながらも幾度となく書の世界は開花してきました。
その時代の記録を残し伝えるための書は、仏教を中心とした中国文化が伝来した時期に一大発展を遂げました。その当時、情報を広めることのできる手段は「筆 を使い、書かれた文字」であり、経典を始めとした様々な情報は次々と、同じく中国で発明された紙に写されながら普及してきました。
平安時代には女流作家によって「かな」が考え出され、「源氏物語」や「枕草子」といった優れた文学作品は、かな文字とかな文字が美しく映える日本の美意識 によって作られた紙を使いながら、多くの人に読まれました。女流作家が作品の中でも紙の魅力について幾度となくふれています。どの時代も文化が国を、そし て人生を、豊かにします。
終戦後間もなくは廃止された習字教育も文化のアイデンティティーのために昭和26年から書写として復活します。日本では子どもの教育に欠かせないものとして「読み・書き・そろばん」と言いました。漢字・かな・漢字かな混じりの書と日本の書の世界は脈々と続いてきました。
どの時代もそうでしたが古き良きものと新しい良きものが一緒になり、そこから新しい文化が、書の世界が再び開花すると思います。
フランス詩と書が奏でる美しいハーモニー
洗練されたフランスの詩と伝統的な日本の書。今までに特にかかわりのなかった二つの文化が結びつき、新しい世界が生まれました。活字では不可能だった、輝くことばの世界です。
二十世紀、日本の書は変わりました。書とは漢詩や漢文を書くものだという常識はくつがえされ、さまざまの試みがなされるようになりました。その一つが、現 代の漢字かな混じりの書です。自分が感動した詩、あるいは日常的で美しいことばを作品にする新しい書は、瞬く間に若い世代を中心に広まったのです。
「読める書」を書くという運動は革命的なもので、現在、たくさんの人々によって実践されていますが、書く詩やことばはあまり広がりがあるとはいえません。 俳句や日本の詩がメインで、その外に広がっていくことが少ないのです。書において、ことばと造形表現は密接にかかわっていますから、素材が変わると、書も また変化します。ですから、新しい表現を目指す作家は、常に新しい素材を探しています。
そこでこのたび、フランス文学者、吉田加南子先生にお願いして、作品にふさわしいフランスの詩を新たに翻訳していただき、これを書壇の第一線で活躍中の著 名書家に作品にしていただきました。書作家の方々はお願いした最初から興味をもち、試行錯誤を経て完成した作品には、今までとは違う表現が生まれてきまし た。まるでシャンソンのメロディーが聞こえるような作品、詩にうたわれた風景が浮かんでくるような、あるいは繊細でささやくような作品など、伝統の枠を飛 び超えた新しい表現が生まれたのです。二十一世紀の新しい書の誕生です。フランス詩集の訳詩本は著作権フリーで、自分らしい作品を書きたいと願う方々の為 には大いなる出会いの本です。それだけではありません。詩の世界を楽しみたい方にも、フランスに興味のある方々が手に取って下さっても身近にフランスの詩 が感じられる事と思います。興味が広がって原文と向き合うこともあるかも知れません。どの時代も文化が人生を豊かにします。
新たな要素が出会うと平穏な水面が波だちます。芸術は活性化し、それまで考えていなかった独創的な作品が生まれるのです。フランスの詩と日本の書という異なった芸術の出会いは、これからどんな展開を見せるでしょう。
記念すべき第一回展を、ぜひとも開催したいと思います。
たくさんの方々にとって楽しんで頂ける展覧会だと思います。
書と詩がふれあう、その波のしぶきとうねりを、時に鮮やか、時に優美な、その彩り、またきらめきを楽しんでください。